木材

日本各地、世界中から様々な木材が新木場に集まります。
わたしたちはこれらの木の特性を生かして、様々なプロダクトを創りだしています。
ここでは、さまざまな”木”の特徴や魅力をご紹介します。


アカガシ

 

名称・・・赤樫(Oak)

その他呼び名・・・

大樫(オオガシ)、大葉樫(オオバガシ)、アカカシ、ホンガシ、クマガシ(*1)

科目・・・ブナ科コナラ(Quercus)属(*2)・常緑広葉樹・放射孔材・離弁花類(被子植物)

学名・・・Quercus acuta Thunb.

産地・・・本州中南部から四国、九州に自生。また朝鮮南部、台湾、中国。

色調・・・心材は淡紅褐色から紅褐色、赤褐色。辺材はやや紅色を帯びた淡い黄褐色。

性質・・・木理:交錯、辺心材の境目:やや不明瞭、肌目:粗、硬さ:極硬、腐食耐久性(耐朽性):中、磨耗耐久性:強

気乾比重:0.80~1.05

平均収縮率%(柾目方向):0.23

平均収縮率%(板目方向):0.43

曲げ強度MPa:118

圧縮強度MPa:54

せん断強度MPa:19.6

曲げヤング係数GPa:16.7

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):困難、鉋掛(カンナガケ):困難、釘打保持力:強、糊付接着性:良好~注意、乾燥:困難、塗装性:中

用途・・・造作材

器具材、車両材、船舶材、機械材、薪炭材、農工具の柄、荷車の荷台枠、車輪、車軸、水車軸、大砲の台、発動機の台、紡績機械のシャトル、刳り物(くりもの)(菓子皿)、敷居、椎茸原木、下駄の歯、ゲートボールスティック、木槌の頭、枕木、木刀、櫓(やぐら)

価格・・・☆☆☆☆

無節材(2000x210x34㎜)90万/㎥

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・

 

その他・・・

 随線が太い為、柾目面には虎斑(とらふ)が現れ、板目面には目の様な形が現れるいわゆる「樫目」が見られる。年輪ははっきりとしていない。カシ類の中では比較的大径木となる。樹高10~20m、樹径0.7m。時に、せん孔虫やカミキリ虫の虫害を受けている場合がある。斑の模様明瞭。鹿児島県、宮崎県、高知県から良材が採れることが知られている。日本産のカシ類の中では最も標高の高いところまで分布する。カシ類で一番硬い姥目樫(ウバメガシ)は細すぎて、製材して用材にすることができない為、アカガシが日本産の用材で最も硬く強度がある木とされる。水に強く狂いが少ない。表面の仕上りは特に良いとは言えない。敷居の溝の中に磨耗防止のためにカシの薄板を埋め込んだりカシ材の敷居を使ったりするが、これをウメガシと言いひとつの建築部材名になっている。同属に白樫(シラカシ)などがある。

 

備考・・・

 同属にはあと、一位樫(イチイガシ:Quercus gilva)や粗樫(アラカシ:Quercus glauca)(=マルバガシ、ナラバガシ、クロガシ)などがあるようです。ただ単に「カシ」というと関東地方ではこのアカガシではなく、シラカシの方を指すことが多いようです。また関西地方ではアラカシ、九州ではイチイガシを指す事が多いかもしれません。

 

*1:「ホンガシ」や「クマガシ」という呼び名は、地方によってアラカシやシラカシを指すこともあります。
*2:「アカガシ」属とする資料もありました。その資料だけでしたので、ほぼ「コナラ」属で良いと思いますが・・・


アガチス

 

名称・・・アガチス(Agathis)

その他呼び名・・・

アルマシガ(フィリピンでの呼び名)、ダマルミニャク(ダマ、ダマールミニヤック)(マラヤでの呼び名)、ダマール(インドネシアでの呼び名)、カウリ(ニュージーランドでの呼び名)、ビンダン(サラワクでの呼び名)、南洋桂(ナンヨウカツラ)、新桂(シンカツラ)、南洋桧(ナンヨウヒノキ)(*1)、コパールノキ

科目・・・ナンヨウスギ科アガチス(Agathis)属(*2)・常緑針葉樹・裸子植物

学名・・・

Agathis spp.
Agathis alba Foxw. 、
Agathis borneensis Warb. などを含む。

産地・・・東南アジアからニュージーランドを経てフィジー、ニューカレドニアなどの太平洋諸島に分布。

色調・・・心材は桃色を帯びた灰褐色ないし淡い黄褐色、淡灰褐色。辺材は淡灰色、淡灰褐色。

性質・・・木理:通直~やや通直、辺心材の境目:やや明瞭~やや不明瞭、肌目:緻密、硬さ:やや軟~中庸、腐食耐久性(耐朽性):弱~やや弱、磨耗耐久性:やや強

気乾比重:0.46~0.52

平均収縮率%(柾目方向):0.16

平均収縮率%(板目方向):0.30

曲げ強度MPa:70

圧縮強度MPa:36

せん断強度MPa:7.8

曲げヤング係数GPa:11.3

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):容易~中、鉋掛(カンナガケ):容易~中、釘打保持力:やや強、糊付接着性:良好~中、乾燥:容易~注意、塗装性:中

用途・・・造作材、建具、家具

縁甲板、家具の引き出し、普及品の碁盤

価格・・・☆

無節材(2000x210x34㎜)45万/㎥

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・平割:34㎜

 

その他・・・

アガチス属には約20種あり、また分布範囲が広い為、国によってこの類の木材に対する呼び名が異なる。ナンヨウカツラの商品名で売り出され有名になったが、カツラやヒノキとは全く関係がない。当初はカツラの代用でタンスの引き出し側板に使われていた。

 

【その他色調等】: 針葉樹であるが年輪は明らかでなく、一見広葉樹を思わせる。心材の色は均一ではなく色幅がある。辺心材の区別はあるものの、見分けがつきにくい。斑の模様は繊細な模様が明瞭。

【その他性質等】: 節は少ないが、大きな節が出る場合もる。

【その他加工等】: アテが強い木なので使用するには柾目の製材が絶対条件となる。また乾燥の際アテの部分が割れたり大きく収縮したりする。

【立木での性質等】:樹高30~40m、樹径は1mを越す大木もある。東南アジア各地で広く植林されている。

 

*1:ラミンのこともナンヨウヒノキと呼ぶことがあるようです。
*2:属名の和名をナギモドキ属とも言います。


アカマツ

Akamatu

 

名称・・・赤松(Japanese red pine)

その他呼び名・・・

雌松(メマツ)、女松(オンナマツ)、日向松(ヒュウガマツ)(霧島松(キリシママツ)、霧島赤松(キリシマアカマツ))(*1)、南部松(ナンブマツ)、津島松(ツシママツ)、山陰松(サンインマツ)(*2)、脂松(ヤニマツ)(肥松(コエマツ))

科目・・・マツ科マツ(Pinus)属・常緑針葉樹・裸子植物

学名・・・Pinus densiflora

産地・・・本州北部から四国、九州に生育。朝鮮にも分布。一般に海辺から離れた地域に見られる。特に宮崎県(日向)、岩手県(南部)、福島県(津島)が産地として有名。

色調・・・心材は黄色を帯びた淡褐色、淡褐白色、多少赤味を帯びたようになっている。辺材は淡い黄白色、白褐色。

性質・・・木理:ほぼ通直、辺心材の境目:やや不明瞭~不明瞭、肌目:粗、硬さ:中庸~やや硬、腐食耐久性(耐朽性):弱~中、磨耗耐久性:強

気乾比重:0.53

平均収縮率%(柾目方向):0.18

平均収縮率%(板目方向):0.29

曲げ強度MPa:88

圧縮強度MPa:44

せん断強度MPa:9.3

曲げヤング係数GPa:11.3

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):容易、鉋掛(カンナガケ):容易、釘打保持力:中、糊付接着性:良好~中、乾燥:良好~やや困難、塗装性:注意

用途・・・構造材、造作材、建具、合板

屋根小屋組の梁(丸太や太鼓払いの形で)、二階梁、根太掛、羽目板、土木材、船舶材、パルプ原料、坑木、経木(きょうぎ)、木毛、箱、床柱、枕木、杭木

価格・・・☆☆

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・

 

その他・・・

日本産針葉樹の中では分布する範囲が最も広い。葉は二葉性で枝先に束生する。乾燥したやせた荒地や、他の樹種は枯れてしまったような二次林に良く育つタフな木。木材としての経済林だけでなく、防風林や土砂防止林として造林されている。ただアカマツは塩に弱い為、潮風の強い浜にはクロマツが植えられている。春から夏にかけて作られた細胞の形が大きく違っている為、木目は鮮明。木質は密。狂いはややあるが、水質に強い。松脂(マツヤニ)が通っている「やにすじ」という部分があり、乾燥が不十分だとこれが表に出て塗装ムラのようにたれてくることがある。細胞間道(樹脂道)を持つ。また大きな生節や脂壷(やにつぼ)もよくある。斑の模様不明瞭。樹高35m、樹径1.5mにもなる。樹皮は亀甲状にはげやすく赤褐色。クロマツより葉が細く柔らかい。アカマツはスギの様な装飾性が乏しく、また脂(ヤニ)がでる為、桧の様に肌との接触部分に使われることが少なく、建築材としての評価は低い方である。建築材の用途としては耐久性がある為、梁などの強度を要する構造材に使用される。ヤニの出ない良材は摩擦部に使うと良く滑る上に、耐久性がある為敷居や鴨居に好んで使われる。ただヤニを特に多く含んだ材は肥松(コエマツ)または脂松(ヤニマツ)と呼ばれ珍重される。コエマツは床の間の地板や飾り棚、座卓、茶道具などに加工され、磨きながら使い込むと飴色の美しい光沢がでる。松茸の取れる木としても有名。

 

備考・・・

アカマツというと、欧州やロシア産で同属のオウシュウアカマツを指す場合もあります。

 

*1:宮崎県日向地方に産する脂気の強いアカマツを、ヒュウガマツやキリシママツと呼びます。材色はやや赤味を帯び、杢目は緻密で柔らかい印象があり、主に床柱や造作材として用いられるようです。
*2:山陰地方(島根、鳥取)に生育するアカマツ、クロマツ、アイグロマツを総称して山陰松(サンインマツ)と言います。特に銘木として山陰松と呼ぶ場合はクロマツまたはアイグロマツを主体として、アカマツとは区別され最高級品とされるようです。


アサダ

 

名称・・・浅田(Hop horn beam、Japanese ironwood)

その他呼び名・・・ミノカブリ、ハネカワ

科目・・・カバノキ科アサダ(Ostrya)属(*1)・落葉広葉樹・散孔材・離弁花類(被子植物)

学名・・・Ostrya japonica Sargent

産地・・・北海道、本州、四国、九州に自生。特に北海道の日高、胆振(いぶり)、十勝方面に多く、太物の良材が産出される。朝鮮南部、済州島、中国にも分布。

色調・・・心材は紅褐色、濃赤褐色。辺材は褐色を帯びた白色、淡い桃灰色。

性質・・・木理:ほぼ通直~やや交錯、辺心材の境目:明瞭、肌目:緻密、硬さ:硬、腐食耐久性(耐朽性):中(~強)、磨耗耐久性:強

気乾比重:0.60~0.73

平均収縮率%(柾目方向):0.23

平均収縮率%(板目方向):0.33

曲げ強度MPa:108

圧縮強度MPa:49

せん断強度MPa:13.7

曲げヤング係数GPa:17.6

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):やや困難、鉋掛(カンナガケ):やや困難、釘打保持力:強、糊付接着性:中、乾燥:やや困難~困難、塗装性:高

用途・・・造作材、建具、家具

床材、敷居、器具材、船舶材、薪炭材、靴の木型、運動具材、器具の柄、橇(そり)、化粧用単板

価格・・・☆☆☆

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・平割:60㎜

 

その他・・・

年輪はやや不明瞭。磨くと光沢が出る。表面の仕上りは良好。心材は年月を重ねるごとに美しく、光沢が増す。斑の模様不鮮明。強靭で割れにくい。ねじれが往々にして現れる。樹高15~20m、樹径0.6~0.8m。あまり大径木にならない。釘抜けが起きにくい特別な材質をしている為、皮を細かい釘で打付ける作業を繰り返す靴製造の木型に使われる。人工乾燥は管理が難しいカンバ類の中でも特に困難である。マカンバを少し黒くしたような色合いの材色な為、家具材として桜材の名で通る。また材質が素直な為、ダケカンバよりも家具材として好まれて使用される。強度はマカンバ以上で、フローリングには最も優秀な材とされている。本州ではアサダの製品は馴染みが薄いが、北海道では家具の製造に使われて馴染みが深いと思われる。アサダ属には一種しか含まれていない。

 

*1:属名の日本語読みをハシバミ属とする資料もありましたが、ハシバミ属は「Corylus」のようですから、「Ostrya」はアサダ属で良いのでしょうね。


アピトン

 

名称・・・アピトン(Apitong)

その他呼び名・・・

クルイン(マレーシア、インドネシア、ボルネオでの呼び名)、ヤン(タイでの呼び名)、チュティール(カンボジアでの呼び名)、カイン(カンイン)(ミャンマーでの呼び名)、ガージュン(インドでの呼び名)、ヤウ(ベトナムでの呼び名)

科目・・・フタバガキ科フタバガキ(Dipterocarpus)属・広葉樹・散孔材・離弁花類(被子植物)

学名・・・

Dipterocarpus spp.
Dipterocarpus alatus(ヤン)、

Dipterocarpus gracilis(クルインケラダン)、

Dipterocarpus grandiflorus(アピトン、クルインヒジャウ)を含む

産地・・・インド、フィリピン、マレーシア、インドシナ、スマトラ、ボルネオ、インドネシアなど

性質・・・木理:通直~交錯(幅がある)、辺心材の境目:明瞭、肌目:粗~やや粗、硬さ:硬、腐食耐久性(耐朽性):中~強、磨耗耐久性:強

気乾比重:0.75

平均収縮率%(柾目方向):0.26

平均収縮率%(板目方向):0.39

曲げ強度MPa:122

圧縮強度MPa:69

せん断強度MPa:13.7

曲げヤング係数GPa:16.2

加工性・・・鋸挽:困難、鉋掛:困難、釘打保持力:強、糊付接着性:不良、乾燥:困難、塗装性:低

用途・・・構造材、造作材、家具、合板

床材、羽目板、柱、梁、梱包材、パレット、防腐処理をして枕木、トラック・バス等の大型自動車ボデー、船舶、器具

価格・・・☆

無節材(2000x210x34㎜)40万/㎥

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・

 

その他・・・

70種類以上あり、「アピトン」は主にフィリピンでの呼び名。心材は灰色を帯びた赤褐色、暗褐色、濃灰褐色。辺材は淡黄白色、灰白色、淡黄褐色。年数を経るとかなり濃色になる。細胞間に樹脂室があり、ヤニと石灰小塊をもつ。樹脂分が多い。フローリング材は有名。ケイ酸塩(シリカ)を含む。石灰質含有により鋸挽(のこびき)は困難だが、ステライト鋸刃での製材は容易。樹脂(やに)が滲み出すため材面は美しくなく、また鉋掛(かんながけ)や接着性に障害がある。斑の模様明瞭。乾燥が遅く、乾燥時は要脱脂。脱脂乾燥をしないと、長年にわたってヤニが染み出して汚くなる。熱帯林の主要構成樹種。南洋材ではラワン(メランチ)類に次いで多く輸入される。生長輪は見られず、垂直樹脂道(短い接線状に配列する軸方向細胞間道)が現れる事が特徴で、これによりラワン(メランチ)類と区別できる。保存薬剤の注入がし易い。


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