イチイ

Ichii2

 

名称・・・一位、櫟(*1)(Japanese yew)

その他呼び名・・・

蘭(アララギ)(関西地方での呼び名)、スダオノキ、水松(ミズマツ)、オンコ(北海道での呼び名)、ラルマニ、笏の木(シャクノキ)、スオウ(*2)、アブラギ、ヤマビャクダン、伽羅木(キャラボク)(*3)。(*4)

科目・・・イチイ科イチイ(Taxus)属・常緑針葉樹・裸子植物

学名・・・Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.

産地・・・北海道から九州までの深山に自生。サハリン、千島、朝鮮、中国東北部、シベリア東部などにも分布。岐阜県大野郡の位山(くらいやま)が笏(しゃく)に使われるイチイの産地として有名(*5)。

色調・・・心材は紅褐色、濃赤褐色。辺材は淡黄白色、黄色を帯びた淡褐色。

性質・・・木理:通直、辺心材の境目:極明瞭、肌目:緻密、硬さ:中庸~やや硬、腐食耐久性(耐朽性):中~強、磨耗耐久性:やや強

気乾比重:0.41~0.48(平均値)~0.51

平均収縮率%(柾目方向):0.20

平均収縮率%(板目方向):0.27

曲げ強度MPa:69

圧縮強度MPa:39

せん断強度MPa:6.9

曲げヤング係数GPa:7.8

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):中~容易、鉋掛(カンナガケ):容易、釘打保持力:やや弱、糊付接着性:中~良好、乾燥:容易、塗装性:高

用途・・・造作材、家具

床柱(丸太の形で)、器具材、細工物(寄木細工、象嵌細工)、彫刻材(アイヌの熊の木彫りや岐阜県飛騨高山の一刀彫りなどが有名)、楽器、鉛筆、笏(しゃく)、庭樹、生垣

価格・・・☆☆☆

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・

 

その他・・・

岐阜県の県木。丸太は小さくて、凹凸があり形が悪い。現在では建築材や家具に使えるほどの量が確保できなくなった為、彫刻など小さくて高価なものの原材料にされている。イチイの名前の由来は、仁徳天皇がこの木で笏(しゃく)(*6)をつくらせ、それで正一位を授けたので「一位」と呼ばれるようになったと云われている。

 

【その他色調等】:成長が遅い為、年輪幅は狭い。斑の模様不明瞭。表面の仕上がりは特に良好。木の肌は滑らかで光沢があり、優美な感じがする。辺材は狭い。

【その他性質等】:ビャクダンに似た香のする木。針葉樹の中ではかなり堅い材に属する。反りや割れも少ない。

【立木での性質等】:あまり大きくなる木ではなく、樹高10~15m、樹径0.5mほど。樹皮は赤褐色。葉は針葉で尖り、羽状につく。雌雄異株で、雌の木だけつける実は橙赤色で果実は甘くておいしいが、種子には毒がある。

 

*1:「櫟井」と書くこともあるようです。また「櫟」の字はクヌギとも読みます。ちなみにクヌギはブナ科の広葉樹です。
*2:イチイの心材が赤く、これを赤色染料とする為、赤色染料用植物として使われている蘇芳(スオウ:マメ科の小高木)(蘇枋とも書きます)から付いた名前のようです。
*3:正確にはキャラボクはイチイの変種で学名はTaxus cuspidatavar. nana になります。イチイより小さく、3m程度の低木で寺院などに良く植えられているようです。
*4:その他の呼び名に、紫木(ムラサキギ)や紫松(読み方不明です)などあるようですが、極稀だと思われます。またアカギ、ミネズオウなどとも呼ぶようです。ただアカギと言うとトウダイグサ科で広葉樹の別種を指すことの方が多そうです。同様にミネズオウと言うとツツジ科の別の植物を指す事が多いでしょう
*5:国有林のようですが、現在はかなり少なくなっているようです。
*6:古くから宮廷で高い地位の衣冠束帯に着飾った人が手にする細長い板のことで、この笏の長さが1尺だった為に「しゃく」と呼ばれたようです。