名称・・・板屋楓(Painted maple)
その他呼び名・・・
イタヤ、イタヤモミジ、常盤楓(トキワカエデ)、カエデ、イタギ、ツタモミジ、エゾイタヤ、オニイタヤ、アカイタヤ(*1)
科目・・・カエデ科カエデ(Acer)属・落葉広葉樹・散孔材・離弁花類(被子植物)
学名・・・
Acer mono Maximowicz
またはAcer pictum Thunb. ex Murray(*2)
産地・・・北海道、本州、四国、九州に自生。南千島、樺太、朝鮮半島、中国大陸にも分布する。
色調・・・心材は帯黄淡薄紅乳白色(偽心は暗褐色)。辺材は帯黄乳白色。または心材、辺材共やや赤味を帯びた白色から淡紅褐色。
性質・・・木理:通直(不規則なことが多い)、辺心材の境目:不明瞭、肌目:緻密、硬さ:やや硬~超硬、腐食耐久性(耐朽性):弱~中、磨耗耐久性:強
気乾比重:0.58~0.65(平均値)~0.77
平均収縮率%(柾目方向):0.16
平均収縮率%(板目方向):0.31
曲げ強度MPa:93
圧縮強度MPa:44
せん断強度MPa:11.8
曲げヤング係数GPa:11.8
加工性・・・鋸挽(ノコビキ):中~困難、鉋掛(カンナガケ):やや困難~困難、釘打保持力:強、糊付接着性:中~良好、乾燥:中~困難、塗装性:注意~高
用途・・・造作材、家具
床板、ピアノ、ハーモニカ、バイオリンの裏板などの楽器材、器具材、運動具、漆器木地、薪炭、ボウリング床板・ピン、スキー板、橇(そり)、道具の柄、船舶、車両、コケシ
価格・・・☆☆
メーカー・・・
一般流通サイズ・・・平割:60㎜
その他・・・
イタヤカエデはいくつかのカエデ属の総称。イタヤの名で通っているものは日本の全土に生育していて20数種がある。さらに観賞用として植えられることが多く、園芸品種も数多くある。用材として優良な材の産地は、北海道と東北北部である。イタヤカエデの名の由来は、雨宿りができるほど葉がびっしりと生い茂り、屋根のようなところから付いたと言われる。紅葉しなく(*3)、いつまでも緑を保ち続ける為トキワカエデの名もある。
【その他色調等】:表面の仕上がりは良好で、材面には絹のような光沢が出る。年輪はやや不明瞭。局部的に繊維の屈曲が多く、美しい縮杢(ちぢみもく)や鳥眼杢(ちょうがんもく)、波状杢が現れるものもあり、工芸材料として珍重される。斑の模様極薄。
【その他性質等】:粘りが強く曲木に適する。傷がつきにくい。乾燥が不十分だと狂いが生じ、またカビの発生をまねく。非常に硬く、かつ導管が詰まっていて割れにくい。偽心材があり、この赤味(心材)が更に硬くなった偽心部は、斧で割裂する事が困難な程に硬く、むしれて裂けにくい部分で利用価値がなく、薪にもならない。
【その他加工等】:塗装時色ムラが出ることがある為注意を要す。加工中に黒い染みや、かすれが出やすい。偽心材が絡みやすい為、用途に応じた木取りを行うことが大切。特に心材は硬くて作業性が悪い為、主に辺材が使われる。木理が不規則なことが多いことも加工を難しくしている。
【立木での性質等】:樹高20m、樹径1.0mくらいになる。カエデ類は一般に大径木にならないが、その中でもイタヤカエデは比較的太くなる。カエデの仲間では珍しく葉縁に鋸歯(きょし:ノコギリの歯のようなギザギザ)がない。
*1:エゾイタヤ、オニイタヤ、アカイタヤなどは、イタヤカエデの中の個別の樹種名です。ちなみに各々学名は
エゾイタヤ:Acer mono ssp. mono (またはAcer pictum ssp. mono f.mono )、
オニイタヤ:Acer mono ssp. ambiguum (またはAcer pictum ssp.pictum f. ambiguum )、
アカイタヤ:Acer mono ssp. mayrii (またはAcer pictum ssp. mayrii )です。
学名で「ssp.」は亜種、「var.」は変種、「f.」は品種という意味で、種をさらに細かく分類する時の単位です。上の学名の「ssp.」の部分を「var.」としている資料もありました。
*2:総称としてのイタヤカエデの学名です。学者によって分類が異なっているせいか、学名が2つあるようです。また、学名の変更も多いようで、正確には把握できませんでしたが、他にも学名がありそうです。
*3:黄葉するようです。