木材

日本各地、世界中から様々な木材が新木場に集まります。
わたしたちはこれらの木の特性を生かして、様々なプロダクトを創りだしています。
ここでは、さまざまな”木”の特徴や魅力をご紹介します。


イエローパイン

Ieroupain2

 

名称・・・イエローパイン(Yellow pine)

その他呼び名・・・

サザンイエローパイン、サザンパイン(*1)、スラッシュパイン(エリオーソテイマツ、エリオッティマツ)、ロングリーフパイン(ダイオウショウ、ダイオウマツ)、ショートリーフパイン(エキナータマツ、エチナータマツ)、ロブロリーパイン(テーダマツ)

科目・・・マツ科マツ(Pinus)属・針葉樹・裸子植物

学名・・・

Pinus echinata(ショートリーフパイン)、

Pinus elliottii(スラッシュパイン)、

Pinus palustris(ロングリーフパイン)、

Pinus taeda(ロブロリーパイン)、

産地・・・テキサス州からバージニア州にかけてアメリカ南部諸州に分布

性質・・・木理:通直、辺心材の境目:明瞭、肌目:緻密~やや粗、硬さ:硬、腐食耐久性(耐朽性):中、磨耗耐久性:強

気乾比重:0.58(ロブロリーパイン)~0.67(スラッシュパイン)

平均収縮率%(柾目方向):0.14~0.16

平均収縮率%(板目方向):0.21~0.23

曲げ強度MPa:77(ロブロリーパイン)~98(スラッシュパイン)

圧縮強度MPa:40(ロブロリーパイン)~46(スラッシュパイン)

せん断強度MPa:8.8(ロブロリーパイン)~10.3(スラッシュパイン)

曲げヤング係数GPa:11.8(ロブロリーパイン)~12.7(スラッシュパイン)

加工性・・・鋸挽:容易、鉋掛:容易、釘打保持力:強、糊付接着性:良好、乾燥:やや困難、塗装性:やや低

用途・・・構造材、造作材、家具、合板

パルプ、床板、車両、内装材、箱、包装、日用品、ボーリングのレーン

価格・・・☆☆

無節材(2000x210x34㎜)60万/㎥

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・平割:30㎜、40㎜

 

その他・・・

イエローパインには詳しくはLongleaf pine、Shortleaf pine、Loblolly pine、Slash pineの4種類がある。これら4種のPineを総称してSouthern pineと呼んでいる。この樹種の製材品はジョージア、アラバマ、アーカンサス、ノースカロライナ、ルイジアナ州から出荷されている。北米西海岸地区ではポンデローサパインをイエローパインと呼ぶ。斑の模様不明瞭。樹径0.5m。ヤニは少ないが、節が多く粘りが無い。スラッシュパインは米国南部の諸州に造林されている。米国の合板の材料は西部ではベイマツ、南部ではイエローパインが使われる。心材の保存性はかなり高いが、辺材は低い。辺材は保存薬剤処理がしやすい為、その上での利用法(屋外の構造材でジェットコースターやボードウォーク)がある。脂(ヤニ)がでてくる為、塗装はやや難しい。木の成長が速く約30年のサイクルで伐採される。比重の高いものは大型の構造物やボーリングのレーンに使用され、比重の低いものは杢目の特性から壁、天井板、羽目板、階段等用途は多様。

 

*1:広義には、北米に分布するハードパイン類を総じてイエローパイン(又はサザンパイン)と呼びます。その為北米の一部ではポンデローサパインもイエローパインと呼んでいるのでしょう。また、ピッチパイン(リギダマツ)やポンドパイン(セロテナマツ)などの三葉松も同様の理由でサザンパインと呼ぶようです。


イエローメランチ

Ieromeranti2

 

名称・・・イエローメランチ(Yellow meranti)

その他呼び名・・・

セランガンカチャ(セランガンカヤ)、セランガンクニン、イエローセラヤ(以上3つはマレーシアのサバ州での呼び名)、イエローラワン(カランチ)(フィリピンでの呼び名)、メランチクニン

科目・・・フタバガキ科Shorea属Rechetia亜属・広葉樹・散孔材・被子植物

学名・・・

Shorea spp.
Shorea faguetiana(イエローセラヤ)、

Shorea resina-nigra(イエローメランチ)、

Shorea kalunti(カランチ)などを含む

産地・・・東南アジア全域、マラヤ、スマトラ、ボルネオ、フィリピンなど

性質・・・木理:交錯、辺心材の境目:不明瞭、肌目:やや粗、硬さ:{軟/中庸/硬、腐食耐久性(耐朽性):弱~中、磨耗耐久性:{弱/中/強

気乾比重:0.45~0.86

平均収縮率%(柾目方向):0.1

平均収縮率%(板目方向):0.27

曲げ強度MPa:77

圧縮強度MPa:41

せん断強度MPa:7.8

曲げヤング係数GPa:10.3

加工性・・・鋸挽:容易~中、鉋掛:容易~中、釘打保持力:{弱/強、糊付接着性:良好~中、乾燥:中(遅い)、塗装性:中

用途・・・建具、家具、合板

価格・・・☆

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・

 

その他・・・

材の色調は固体によって濃淡の差がかなりある。狂いが少なく、表面の仕上りも良好。辺材部は虫の害を受けやすい。装飾的な価値が低いので、表面材として使用されることは少ない。約30種類あるとされ、地方名はかなり違っている。イエローメランチの類の丸太にはその中心部にしばしばアンブロシア類の虫害がみられるが、それが外側から見えないため丸太の評価を混乱させる。このような虫の跡を中ピン(中にあるピンホールという意味)と呼ぶ。丸太の時は心辺材の区別ははっきりしているが乾燥するとそれ程ではない。同心円状に配列する軸方向細胞間道(樹脂道)をもつ。他のメランチ類と異なっているのは、水平細胞間道をもっていることである。他のメランチのうち淡色のものと比較すると表面の仕上りはよくない。また他のメランチ類と比較して劣るのは、セメントの硬化障害をおこすのでコンクリートパネルとして利用するには表面処理が必要。このこともあり、他のメランチ類よりも低く評価される。釘打で割れ易い。

 

備考・・・

フィリピンではホワイトメランチもイエローラワン(カランチ)と呼んでいるようです。ホワイトメランチも黄ラワン類のグループのようですから、似ているのでしょうね。


イスノキ

Isunoki2

 

名称・・・柞の木、蚊母樹(*1)(Isu tree、Witch hazel)

その他呼び名・・・

イス、ユスノキ、ユス、ユシノキ、瓢の木(ヒョンノキ)、猿笛(サルブエ)、猿瓢(サルビョウ)

科目・・・マンサク科イスノキ(Distylium)属・常緑広葉樹・散孔材・離弁花類(被子植物)

学名・・・Distylium racemosum

産地・・・本州南部、四国、九州、沖縄。台湾、済州島、中国にも分布。特に鹿児島県が産地として有名。温暖な地に生育。

色調・・・心材は淡い紅褐色ないし紫褐色、暗褐色で、時に濃淡の縞が現れることがある。辺材は紅色を帯びた淡い黄褐色、暗褐色。

性質・・・木理:やや交錯、辺心材の境目:やや不明瞭~不明瞭、肌目:極緻密、硬さ:硬~超硬、腐食耐久性(耐朽性):中~強、磨耗耐久性:強

気乾比重:0.75~0.90(平均値)~1.00

平均収縮率%(柾目方向):0.23

平均収縮率%(板目方向):0.43

曲げ強度MPa:127

圧縮強度MPa:64

せん断強度MPa:17.6

曲げヤング係数GPa:13.7

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):やや困難~困難、鉋掛(カンナガケ):やや困難~困難、釘打保持力:強、糊付接着性:やや不良、乾燥:困難、塗装性:高

用途・・・造作材、家具

床柱、床板、敷居、器具材、機械材、楽器材(三味線、琵琶の撥(ばち)など)、彫刻材、木刀、枕木、薪炭材、櫛、挽物(ひきもの)

価格・・・☆☆

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・平割:34㎜

 

その他・・・

ツゲ、シタン、コクタンの模擬材にもなる。立ち木のまま枯らし、さらに長期間風雨にさらしたものを風蝕材といって、これを磨いて床回りに使われる(*2)。日向ではイスノキの皮を剥いで風蝕材としたもの、または埋れ木を「スヌケ」と呼び、高価な床柱として扱われる。主に庭木として栽培される。樹皮と葉の灰は「柞灰(いすばい)」といって、有田焼で釉薬(うわぐすり)を染付ける媒材に用いられる。

 

【その他色調等】:年輪はやや不明瞭。表面の仕上がりは良好。斑の模様不明瞭。

【その他性質等】:日本産で、最も重厚な材の一つ。割れにくい。

【立木での性質等】:樹高10~20m、樹径0.4~1.0m。自生樹では樹高25mの高木になるものも珍しくない。良材は国有林、神社・仏閣などの限られた場所にしかない。

 

*1:「蚊母樹」と書いて「イスノキ」と読むようです。「ぶんぼじゅ」と読むという話もありますが、どうなんでしょう?
*2:京都ではこれを舎利と呼ぶようです。


イタヤカエデ

Itayakaede

 

名称・・・板屋楓(Painted maple)

その他呼び名・・・

イタヤ、イタヤモミジ、常盤楓(トキワカエデ)、カエデ、イタギ、ツタモミジ、エゾイタヤ、オニイタヤ、アカイタヤ(*1)

科目・・・カエデ科カエデ(Acer)属・落葉広葉樹・散孔材・離弁花類(被子植物)

学名・・・

Acer mono Maximowicz
またはAcer pictum Thunb. ex Murray(*2)

産地・・・北海道、本州、四国、九州に自生。南千島、樺太、朝鮮半島、中国大陸にも分布する。

色調・・・心材は帯黄淡薄紅乳白色(偽心は暗褐色)。辺材は帯黄乳白色。または心材、辺材共やや赤味を帯びた白色から淡紅褐色。

性質・・・木理:通直(不規則なことが多い)、辺心材の境目:不明瞭、肌目:緻密、硬さ:やや硬~超硬、腐食耐久性(耐朽性):弱~中、磨耗耐久性:強

気乾比重:0.58~0.65(平均値)~0.77

平均収縮率%(柾目方向):0.16

平均収縮率%(板目方向):0.31

曲げ強度MPa:93

圧縮強度MPa:44

せん断強度MPa:11.8

曲げヤング係数GPa:11.8

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):中~困難、鉋掛(カンナガケ):やや困難~困難、釘打保持力:強、糊付接着性:中~良好、乾燥:中~困難、塗装性:注意~高

用途・・・造作材、家具

床板、ピアノ、ハーモニカ、バイオリンの裏板などの楽器材、器具材、運動具、漆器木地、薪炭、ボウリング床板・ピン、スキー板、橇(そり)、道具の柄、船舶、車両、コケシ

価格・・・☆☆

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・平割:60㎜

 

その他・・・

イタヤカエデはいくつかのカエデ属の総称。イタヤの名で通っているものは日本の全土に生育していて20数種がある。さらに観賞用として植えられることが多く、園芸品種も数多くある。用材として優良な材の産地は、北海道と東北北部である。イタヤカエデの名の由来は、雨宿りができるほど葉がびっしりと生い茂り、屋根のようなところから付いたと言われる。紅葉しなく(*3)、いつまでも緑を保ち続ける為トキワカエデの名もある。

 

【その他色調等】:表面の仕上がりは良好で、材面には絹のような光沢が出る。年輪はやや不明瞭。局部的に繊維の屈曲が多く、美しい縮杢(ちぢみもく)や鳥眼杢(ちょうがんもく)、波状杢が現れるものもあり、工芸材料として珍重される。斑の模様極薄。

【その他性質等】:粘りが強く曲木に適する。傷がつきにくい。乾燥が不十分だと狂いが生じ、またカビの発生をまねく。非常に硬く、かつ導管が詰まっていて割れにくい。偽心材があり、この赤味(心材)が更に硬くなった偽心部は、斧で割裂する事が困難な程に硬く、むしれて裂けにくい部分で利用価値がなく、薪にもならない。

【その他加工等】:塗装時色ムラが出ることがある為注意を要す。加工中に黒い染みや、かすれが出やすい。偽心材が絡みやすい為、用途に応じた木取りを行うことが大切。特に心材は硬くて作業性が悪い為、主に辺材が使われる。木理が不規則なことが多いことも加工を難しくしている。

【立木での性質等】:樹高20m、樹径1.0mくらいになる。カエデ類は一般に大径木にならないが、その中でもイタヤカエデは比較的太くなる。カエデの仲間では珍しく葉縁に鋸歯(きょし:ノコギリの歯のようなギザギザ)がない。

 

*1:エゾイタヤ、オニイタヤ、アカイタヤなどは、イタヤカエデの中の個別の樹種名です。ちなみに各々学名は
エゾイタヤ:Acer mono ssp. mono (またはAcer pictum ssp. mono f.mono )、
オニイタヤ:Acer mono ssp. ambiguum (またはAcer pictum ssp.pictum f. ambiguum )、
アカイタヤ:Acer mono ssp. mayrii (またはAcer pictum ssp. mayrii )です。
学名で「ssp.」は亜種、「var.」は変種、「f.」は品種という意味で、種をさらに細かく分類する時の単位です。上の学名の「ssp.」の部分を「var.」としている資料もありました。
*2:総称としてのイタヤカエデの学名です。学者によって分類が異なっているせいか、学名が2つあるようです。また、学名の変更も多いようで、正確には把握できませんでしたが、他にも学名がありそうです。
*3:黄葉するようです。


イチイ

Ichii2

 

名称・・・一位、櫟(*1)(Japanese yew)

その他呼び名・・・

蘭(アララギ)(関西地方での呼び名)、スダオノキ、水松(ミズマツ)、オンコ(北海道での呼び名)、ラルマニ、笏の木(シャクノキ)、スオウ(*2)、アブラギ、ヤマビャクダン、伽羅木(キャラボク)(*3)。(*4)

科目・・・イチイ科イチイ(Taxus)属・常緑針葉樹・裸子植物

学名・・・Taxus cuspidata Sieb. et Zucc.

産地・・・北海道から九州までの深山に自生。サハリン、千島、朝鮮、中国東北部、シベリア東部などにも分布。岐阜県大野郡の位山(くらいやま)が笏(しゃく)に使われるイチイの産地として有名(*5)。

色調・・・心材は紅褐色、濃赤褐色。辺材は淡黄白色、黄色を帯びた淡褐色。

性質・・・木理:通直、辺心材の境目:極明瞭、肌目:緻密、硬さ:中庸~やや硬、腐食耐久性(耐朽性):中~強、磨耗耐久性:やや強

気乾比重:0.41~0.48(平均値)~0.51

平均収縮率%(柾目方向):0.20

平均収縮率%(板目方向):0.27

曲げ強度MPa:69

圧縮強度MPa:39

せん断強度MPa:6.9

曲げヤング係数GPa:7.8

加工性・・・鋸挽(ノコビキ):中~容易、鉋掛(カンナガケ):容易、釘打保持力:やや弱、糊付接着性:中~良好、乾燥:容易、塗装性:高

用途・・・造作材、家具

床柱(丸太の形で)、器具材、細工物(寄木細工、象嵌細工)、彫刻材(アイヌの熊の木彫りや岐阜県飛騨高山の一刀彫りなどが有名)、楽器、鉛筆、笏(しゃく)、庭樹、生垣

価格・・・☆☆☆

メーカー・・・

一般流通サイズ・・・

 

その他・・・

岐阜県の県木。丸太は小さくて、凹凸があり形が悪い。現在では建築材や家具に使えるほどの量が確保できなくなった為、彫刻など小さくて高価なものの原材料にされている。イチイの名前の由来は、仁徳天皇がこの木で笏(しゃく)(*6)をつくらせ、それで正一位を授けたので「一位」と呼ばれるようになったと云われている。

 

【その他色調等】:成長が遅い為、年輪幅は狭い。斑の模様不明瞭。表面の仕上がりは特に良好。木の肌は滑らかで光沢があり、優美な感じがする。辺材は狭い。

【その他性質等】:ビャクダンに似た香のする木。針葉樹の中ではかなり堅い材に属する。反りや割れも少ない。

【立木での性質等】:あまり大きくなる木ではなく、樹高10~15m、樹径0.5mほど。樹皮は赤褐色。葉は針葉で尖り、羽状につく。雌雄異株で、雌の木だけつける実は橙赤色で果実は甘くておいしいが、種子には毒がある。

 

*1:「櫟井」と書くこともあるようです。また「櫟」の字はクヌギとも読みます。ちなみにクヌギはブナ科の広葉樹です。
*2:イチイの心材が赤く、これを赤色染料とする為、赤色染料用植物として使われている蘇芳(スオウ:マメ科の小高木)(蘇枋とも書きます)から付いた名前のようです。
*3:正確にはキャラボクはイチイの変種で学名はTaxus cuspidatavar. nana になります。イチイより小さく、3m程度の低木で寺院などに良く植えられているようです。
*4:その他の呼び名に、紫木(ムラサキギ)や紫松(読み方不明です)などあるようですが、極稀だと思われます。またアカギ、ミネズオウなどとも呼ぶようです。ただアカギと言うとトウダイグサ科で広葉樹の別種を指すことの方が多そうです。同様にミネズオウと言うとツツジ科の別の植物を指す事が多いでしょう
*5:国有林のようですが、現在はかなり少なくなっているようです。
*6:古くから宮廷で高い地位の衣冠束帯に着飾った人が手にする細長い板のことで、この笏の長さが1尺だった為に「しゃく」と呼ばれたようです。


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